育苗施設紹介

「PLANT FACTORY」に閉鎖型苗生産システムの記事が掲載

PLANT FACTORY

植物工場の産学関連者向けに
発行された「PLANT FACTORY」
技術開発部長の梁が執筆した
閉鎖型苗生産システムについての原稿が掲載されました。

掲載原稿の日本語翻訳

1.Vision and Mission

生産者の高齢化や農業人口の減少、安価な海外農産物の輸入など様々な問題を抱える日本の農業において、「日本農業に革命を」「夢が語れる農業へ」の経営理念のもと、ベルグアースは「農業のためになる」「役に立つ」ことを目的とし、農業の計画生産を支援することで「儲かる農業」の実現を目指している。当社は、①トマト、キュウリなど果菜類の接ぎ木苗の生産・販売を主体とした「野菜苗生産販売事業」と、②農産物の販売・産地開発や農業資材の仕入れ販売等を手掛ける「流通事業」という二つの主要事業を展開している。さらには日本国内に留まらずアジア地域への進出を開始し、日本のきめ細やかな育苗や青果物生産のノウハウを生かした、安全安心な農産物の普及の実現に挑戦している。

2.History and geographical location

当社は1986年に個人事業として創業し、1996年に前身となる(有)山口園芸を設立した。(株)山口園芸を経て、同社から研究開発部門・企画部門・販売部門を分社化し2001年ベルグアース(株)を設立、2011年にはJASDAQ市場に上場を果たした。
生産拠点として、四国の南西海岸部に位置する愛媛県宇和島市津島町に本社農場をおく。また、直営農場4拠点(長野・茨城・岩手・愛媛(松山))を運営し、日本各地の苗生産委託先企業約20社とも提携することで、全国の産地へ鮮度管理・輸送コスト管理を徹底した苗の生産販売を行っている。さらに、国内最大級となる閉鎖型苗生産施設を本社農場に建設し、2006年より全国各地へ向けて無農薬高品質苗の販売を開始した。2014年には、関連会社となるベルグ福島(株)を設立し閉鎖型育苗施設を新たに導入する計画で、東日本への苗供給を中心に生産規模の拡大を図る。

3.Business model

当社は、顧客ニーズに応えるべくオーダーメイドによる野菜苗の生産・販売を行っている。野菜苗の中でもトマト、キュウリなどの果菜類の生産販売を手掛けており、その中でも特に、美味しく収穫量の多い特徴を持つ植物(穂木)と根張りが良く病気やストレスに耐性のある植物(台木)をつなぎ合わせることにより、両方の特徴を併せもつ「接ぎ木苗」を主力商品としている。当社の生産工程は、本社農場にて接ぎ木前育苗と接ぎ木を、各地の農場にて接ぎ木後育苗を担当するように分割しており、これによりそれぞれの産地に合った苗を日本全国へ販売することを可能にした。本社農場に播種から接ぎ木までの過程を集約し、接ぎ木した苗を各地の農場へ省コスト発送し、生産者に近い地域の直営農場や委託先企業の農場にて製品化し出荷することで、計画的苗生産と全国各地への販売を実現している。さらに、生産管理システムを主軸としたWEBでの在庫公開・在庫管理・農薬履歴等のシステムネットワークを開発し、本社と直営農場・委託先農場を結び、顧客の要望に対して経営方針として「いつでも・どこでも・いくらでも」苗を提供できる体制を確立している。
生産者ニーズをとらえた新商品の開発・販売にも力を入れており、生分解性ポットを使用した「アースストレート苗」、接ぎ木苗を低価格で提供できる「ヌードメイク苗」(Figure 1(A))など、時代やニーズに応える新商品を次々と生み出している。また、閉鎖型苗生産施設の利点を最大限に活用した、病害リスクがなく従来のハウス育苗の苗よりも高品質かつ苗質の揃った無農薬高品質苗「e苗」シリーズ(Figure 1 (B))を販売している。さらに、1本の苗から枝を2本に分枝させることで苗1本当たりの収穫量を向上させ、生産者の作業負担を軽減することのできる「ツイン苗」(Figure1(C))の開発・販売を行い、好評を得ている。このように様々な新商品を提案することで、生産者が自身の栽培様式にあわせて農薬や葉の展開枚数などの生育ステージ、容器の形状など最適な苗を選択し注文することができる。

トマト接ぎ木苗のオリジナル商品。

  • ヌードメイク苗。断根して輸送コストを削減することで低価格で提供できる。

  • 「e苗」シリーズの接ぎ木苗

  • 「e苗」シリーズの「ツイン苗」

4.Main crops

閉鎖型苗生産施設では、年間約300万本の苗が生産されており、ナス科(トマト・ナス)の接ぎ木および実生苗と、ウリ科(キュウリ・スイカ・メロン)の接ぎ木苗を中心に生産している。主力商品としてトマトの無農薬高品質苗「e苗」シリーズ、低価格・省コスト輸送を実現した無農薬接ぎ木の「ヌードメイク苗」を生産出荷しており、また農薬削減や品質向上のオーダーに応じてポット苗などの接ぎ木前育苗にも使用している。
各商品を構成する品目は、次のとおりである。「e苗」シリーズの商品は、その品目ほぼ全てがトマト苗であり、接ぎ木苗 (47%)と接ぎ木をしない実生苗(53%)がほぼ半々の割合で生産している。ヌードメイク苗として出荷されるものの品目別割合は、トマト(34%)、キュウリ(35%)、メロン(22%)、スイカ(9%)の4品目で構成されている。ポット苗などの規格の商品となる品目は、キュウリ、メロン、スイカが88.8%、トマトは7%で構成されている。
果菜類のほかにも、注文に応じてレタス、キャベツ、ハクサイ、ハーブなどの葉菜類の生産も行っている。

5.Outline of plant factory (building size, floor area, No. of tiers, hydroponic system, light source, etc.)

閉鎖型苗生産施設の規模は、総床面積は700㎡あり、16.2㎡の人工光閉鎖型苗生産装置「苗テラス」(太洋興業(株)、現:三菱樹脂アグリドリーム(株))を21基、およびその他設備として発芽庫1基と養生庫2基を設置している(Figure 2 (A))。播種から接ぎ木までの育苗、接ぎ木、接ぎ木後の養生順化から苗出荷までの一連の作業を施設内で行うことができる。苗はエアーシャワー等を完備した建物と箱型の苗テラスによって二重に外部と隔離されている。各苗テラスは空間・制御系が完全に独立しており、例え病原菌や害虫の被害が生じた場合でも、そのテラスを隔離し被害を最小限にとどめることができる。
苗テラスは、タイマー制御式底面潅水方式を採用し、HF型蛍光灯を光源とした5段の育苗棚を6棚備える(Figure 2 (B))。1基当たり育苗セルトレーを120枚、施設全体で2,520枚の入庫が可能である。給液タンクは苗テラス外部に配置されており、外部操作パネルにより設定時刻・灌水時間に合わせてもしくは手動で潅水を行うことができる。催芽後の育苗は、品目・苗規格ごとに最適化した育苗スケジュールに沿って温度、風速、日長、炭酸ガス濃度、潅水等の各種条件を設定し、各基を運転することで、計画的かつ安定的な無農薬苗の栽培を可能にしている。

閉鎖型施設の写真。

  • 苗テラス外観。

  • 苗テラス内部。5段の育苗棚が配置され、セル苗が入庫されている。

6.Costs by components and sales price

閉鎖型苗生産施設の初期コストは、建物 40百万円、栽培設備 205百万円、インフラ 20百万円であり、総額265百万円であった。年間の運用コストは、減価償却費 20百万円、電気代 17百万円、人件費 25百万円、原材料費 20百万円、運送費 7百万円で構成され、総額 89百万円である。
  「e苗」シリーズの販売価格は、種子価格、栽培規格に応じて変動しており、トマト実生苗で一本あたり20円~68円、接ぎ木苗は1本あたり118~166円程である。キュウリ、メロンの接ぎ木苗の場合1本あたり130円前後で販売している。通常の太陽光利用型ハウス栽培の苗に比べ、高い価格設定であるが、価格以上の高付加価値を付与し、大規模園芸施設を運用する農業企業を中心に販売数は増加傾向にある。

7.Markets

閉鎖型苗生産施設の「e苗」シリーズは本社農場を置く四国地方(28%)に納品している他、遠方の東~北日本地域(51%)に向けて出荷している。関東以北は日本国内でも農業が盛んな地域で、苗の需要も西日本と比べて多い。閉鎖型苗生産施設の苗は、通年で一定の環境下で育苗されており、トマトでは第1花房の着生が季節や天候に左右されず、収穫時期の早期安定化が見込まれる。企業が農業生産事業に新規参入し、大規模施設を設けて事業を開始する昨今、定植後の生産性が高く農産物に減農薬などの付加価値がつけやすい「e苗」シリーズの需要は年々増加している。
 果菜類の接ぎ木苗の生産量は、生産者の苗の定植時期である3~5月と7~8月にピークを迎える。果菜類を中心に扱う当社は、苗生産量の減る閑散期が11~2月にあたる。農場全体の稼働率を上げることが喫緊の課題である。

8.Future plan

減農薬栽培のための野菜苗の需要増加や、高付加価値苗の安定生産を求める生産者に対応するため、閉鎖型苗生産施設の新規導入を計画している。導入先として関連会社ベルグ福島(株)を設立し、当社の最大の閉鎖型生産苗の供給先である東日本地域、とりわけ関東向けの苗生産を強化していく方向である。また、11~2月にかけての苗の生産減少時における苗テラスの有効活用のため、多品目化や新商品の開発、高付加価値機能性野菜の栽培などの研究を進めている。さらに、環境汚染や衛生管理の不備などから食に対する不信感が強まっているアジア地域において、日本の育苗技術や果菜類の栽培技術の伝達、閉鎖型苗施設の設置検討も含め、安全安心な農産物を普及させるべく海外苗販売事業を開始している。

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